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Blogger's Avatar  2013-9-28 19:22
 もう恒例のような感じで恐縮ですが,遅れてごめんなさい。講義をしている看護学校の夏休みが明けたのと,いろいろと忙しくなってしまって,ブログの方まで手が回りませんでした。オフィスのFacebookページやツイッターでは毎日何か書いていますので,次の更新まではそちらもお楽しみください。・・って,言い訳になってない気がしますが,今回はシャーマニズムと心理療法について書きます。
 シャーマニズムというのは,アメリカのネイティヴ・アメリカン,オーストラリアのアボリジニ,日本だと沖縄のユタなど,世界各地の土着の民族に受け継がれているシャーマンを中心とする文化を指した言葉ですが,心理療法のルーツとしても,エレンベルガーの『無意識の発見』を筆頭に,その共通性や関連性はこれまでにも様々な形で指摘されています。シャーマンは,狩猟民族では狩りについて,農耕民族なら作物について,そのコミュニティの人々が生きていく上で重要なことを,今でいう占いを用いて全体に示したり,そのコミュニティで起こっている問題や個人の悩み,そして心身の症状までを担っています。シャーマンの働きは,時代とともに占い師や各宗教の専門職,医者,部落の長老や集団のまとめ役などに分化してきたと考えられますが,個人の悩みや精神症状は占い師や各宗教の専門職が主に担っていたと言えるでしょう。精神科医や臨床心理士といった専門職が出てきてからはまだ100年ちょっとですから,まだまだ歴史も浅く,シャーマニズムというルーツに学べる部分は大きいと思います。

 シャーマンが行う心理療法的な行為は,そのコミュニティの世界観に基づき,精霊や先祖の霊などとコンタクトすることによって行うイメージを持つ人が多いようですが,夢見と言われるような,夢の世界に入っていくことで何らかのヒントを相談者に伝え,本人が気づきを得ていくといった方法もよく用いられます。心理療法では,深層心理学の分野で夢を似たような形で扱います。フロイトは「夢は無意識への王道」と表現してそれを分析しようとしましたし,ユングはさらにシャーマンが行うのに近い形のアクティヴ・イマジネーション(能動的想像法)を行っていました。そして,ミンデルのプロセスワーク(プロセス指向心理学)では無意識に深くコンタクトする「ドリームワーク」をより多角的に発展させています。プロセスワークでは特に,各地のシャーマニズムの伝統に学ぶ形で,心理療法に応用しています。このように,シャーマニズムと心理療法は,時代や地域の文化差はあるものの,その歴史で連綿と受け継がれてきたとも言えると思います。

 シャーマニズムは僕にとっては,心理療法を学ぶ前に身につけていた占術と心理療法を融合させるという方向性に達する中で必然的に位置づけられたものですし,今回シャーマニック・コラージュを行うのも,よりシャーマンが行う夢見の形に近づいたひとつの方法として提案するものです。前述した霊的な世界は,僕には感じとることができないのですが,心理療法でユング心理学を中心にクライエントさんの無意識を通して起こってくる様々な現象に共通したつながり,ユング派では布置と言いますが,それをイメージ化すると霊的な世界を感じとる人には何かの霊という形で見えるのだろうということは,そういう能力がある人の話を聞いていると実感するところではあります。例えば,恨みー恨まれるという関係性が布置されている人を霊的に見ると,怨霊のようにイメージ化されるという感じです。そういう意味では,霊的な意味でもシャーマンと類似したことをしているとも考えられます。もちろん,シャーマンとは時代的な背景や価値観が違うので,それは考慮しなければなりませんし,こういうことを考えている心理療法家は現代では少数派だと思いますが,僕なりにシャーマニズムの歴史を受け継いでいけたらと考えています。

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