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Blogger's Avatar  2013-11-24 19:15
 秋を通り越したように冬の寒さがやってきていますが,風邪が流行っているようです。僕も治ったと思ったらまた風邪をひくという感じで,まただいぶ更新が遅れてしまってごめんなさい。2週間前に行われたシャーマニック・コラージュは,ペアワークへの発展でさらに気づきが広がったり深まったりして,基本形ができてきました。来年から定例会を開催していきたいと思いますので,またサイト上でお知らせしていきたいと考えています。さて今回は,心理療法と心身の自然ということについて考えてみたいと思います。
 心理療法の考え方のひとつとして,自然治癒力を発揮できるように支援することを中心とするものがあります。ロジャースが最初に提唱した「非指示的療法」は,基本的に自然治癒力の働きを信頼しているもので,心理療法の世界で第三の潮流となりました。フロイトの精神分析は,無意識の抑圧を解放するために解釈を行うことが中心で指示的な側面もありますが,無意識の欲動という自然な心の働きに注目しています。ユングに至っては,箱庭療法やアクティヴ・イマジネーションに見られるように無意識の自律性を重んじる側面が強くなり,無意識という心の自然な働きを重視するようになっています。人間の意識という働きは,社会や人間関係で求められる行動規範などに基づいて自分の心をコントロールすることに重きを置く傾向にあります。反して無意識は,自然な欲求に基づいて本能的に感情もあらわに心身を通して表現しようとします。しかし,この自然な欲求を発することは人間社会の中では不適切とされることが多く,コントロールしなければなりません。そうして,心身の自然な働きは抑圧されていきます。心身の症状は,この行き場がなくなった自然な働きを表現しようするものだというのが,僕の心理療法における基本的な考え方です。

 簡単な例で,典型的でもある怒りを取り上げてみます。怒りの感情は,表出することが人間関係上あるいは社会的役割として不利に働くことが多いので,多くの場合コントロールされます。感情をコントロールしたいという主訴で来談される方もいらっしゃるのも,このような不利を回避する必要がある場合が多いと思います。もちろん,怒りの感情をコントロールすることは社会生活を行う上で大切なのですが,その表現の場がないと心身に蓄積されて様々な症状になっていきます。怒りをこらえている時は,たいてい吐き出したい感情の言葉を出てこないように飲み込みますが,それがひどいと呼吸器系や消化器系に異常をきたします。そういう形で身体が表現するのが心身症と言われます。怒りを心の奥に押し込めようとする時,「自分が悪い」という風に考えることが多く見られます。理不尽なことをされて本当は怒りたいのに,自分が悪いからそうされるんだと変換されてしまうのですが,虐待された子どもでもパワハラを受けた大人でもそうなりやすいです。そうすると,自分を責める方向に怒りのエネルギーが向いて抑うつになっていきます。このような場合,怒りが正当なものとして認められて表現できると症状が緩和されていきます。まあ,実際には様々な要素が絡み合うのでそう単純ではありませんが,このように自然な心身の欲求に気づいていくことは,症状の緩和や改善のひとつの基本と言えます。

 身体の自然という意味では,僕は野口整体の考え方からも多くを学んでいます。野口整体では,簡単に言うと,風邪をひくのは身体が過度の緊張や感情の抑圧で硬くなってしまったものを緩めて自然な心身に戻すための働きと考えていますし,推奨されている活元運動というものも,身体の無意識の動きに任せていくことで「整体」と呼ばれる身体が整った状態を保とうとするものです。これも,身体を通して表現をしているわけで,抑圧された感情との関連が強いとされています。心理療法としては,プロセスワークでも身体の無意識の動きを増幅するようなアプローチが取られますし,シャーマニック・コラージュでは視覚的なイメージである無意識の表現をさらに無意識の自律性に任せて展開していきます。現代はコントロールするという発想が強くて,こういった心身の自然というものを表現する機会というのはとても少なくなっています。コントロールという発想を突き詰めると,自然までもコントロールできるという発想になりがちですが,自然災害に人間が無力であるように,心身の自然もコントロールしきれるものではないと思います。社会生活を営みながら,心身の自然を表現できる場を作っていくことが,これからの心理療法でも,シャーマニック・コラージュ定例会のような場としても,大切になっていくと感じています。

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