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Blogger's Avatar  2018-8-19 15:49
 東京は猛暑が一段落して,少し過ごしやすくなったのですが,ちょっと落差が大きい感覚があります。お盆休みだった方も多いと思いますが,夏の疲れが出てくる時期でもあるので,うまくリフレッシュできているといいですね。僕の方は,学会の準備や公認心理師の試験勉強で,まとまったリフレッシュはおあずけという感じです。今回は,日本心理臨床学会の自主シンポジウム「開業臨床のやりがいと楽しさ」で,話題提供者として話すことになっていて,その準備をしているところなので,それをテーマに感じていることを書きたいと思います。
 開業臨床というのは,僕が臨床心理士を目指した時から視野にありましたし,もともとは占い師として相談を承ったりしていたので,それほど特別という感じではなく,開業を前提に研鑽してきたという感じです。それでも,資格を取ってすぐ開業できるほど甘いものではないと学ぶ過程で思ってはいたので,医療関係や教育関係の機関で非常勤として働きながら,カウンセリングルームとして開業しているところのカウンセラー/セラピストとして仕事をして開業臨床の感覚を肌で感じる経験ができるようにしたり,開業することを前提に考えてきました。そうしているうちに,一緒に仕事をしたり学んだりしたつながりを通して信頼関係ができていき,「カウンセリングをお願いしたい人がいて・・・」と紹介されるようになって,公的施設の応接室を時間貸しで借りてカウンセリング/心理療法を始めたのが開業臨床のはじまりでした。紹介をいただけるというのは,相手の仕事ぶりや人格的な側面などを信頼していないとなかなかできないものなので,最初のやりがいというのは,その信頼と期待に応えていくということだったように思います。都市部では,臨床心理士の数が飽和していて,なかなか仕事を見つけるのも大変な状況があり,そういった事情から資格を取ってすぐ開業するような話も聞くのですが,いろいろと疑問を感じるところではありますね。

 もちろん,紹介が頻繁にあるわけではないですし,それだけで経営面で開業が成り立つというわけでもないのですが,開業臨床は特に信頼に足る人格や仕事の内容がないと難しいと思いますので,周囲から紹介を受けられるぐらいの信頼を得られているかどうかは,周囲を鏡のようにして自分を見ることができるので,開業する点でのひとつの目安になるのではないかと思います。仕事の内容は,勤務先の同僚などならある程度は感じてもらえますが,一番はクライエントさんが実感するところです。紹介した人にも,その後を気にして様子を見たりしているので,継続していて一定以上の改善がみられると,安心してもらえます。やりがいという意味では,カウンセラー/セラピストとしての仕事を日々振り返りつつ,学びや研鑽を重ねてスキルも向上していますので,やはりそれが役に立って,クライエントさんが改善や成長などの良い方向に変化していることが,鏡のように自分のやりがいとして返ってくるという感覚がありますね。カウンセリング/心理療法の効果はスキルだけではなく,カウンセラー/セラピストへの信頼感や安心感に負うところが大きい側面もあります。継続的に来ていただいているクライエントさんには,「いろいろな人に受けたけど,盛田さんが一番よかった」といった言葉もいただいたりするので,大きなやりがいを感じますし,いろいろな意味で感謝の気持ちがふくらんできます。

 「楽しさ」も自主シンポジウムのテーマのひとつですが,個人開業だと基本的には自由に仕事ができるので,僕にとってはそれ自体が楽しさにつながっています。もちろん,統合的心理療法の立場でクライエントさんに合った形でカウンセリング/心理療法を行いますが,その中で自由にアレンジできるアート性みたいなところ,例えて言えば華道のような感じでしょうか,そういう楽しさがありますね。組織の中でも,やりがいや楽しさは感じられますが,周りと協働して共有できる反面,どこか間接的な感覚があります。個人開業は,すべてを自分ひとりの裁量でやる苦労や責任も引き受けるという意味ではプレッシャーも感じますが,自分の努力や成長がダイレクトに返ってくるという喜びがあるように思います。健全な意味での自己愛というものも,その中でテーマになってきたりしますし,自分自身の理解や成長にも関心があるので,開業臨床という営み自体が楽しさとつながっている感じですね。もちろん,生きていくことと同じように,大変さやつらさを感じることも結構ありますが,そういう時期を乗り越えるとまたやりがいや楽しさを感じられたりします。常勤職を得て,組織というある種の守りの中で安定感を得られた上でのやりがいや楽しさというものもあるでしょうし,どちらが良いかというよりは,志向性の違いなのだと思います。書いてみて,開業臨床が自分の志向性に合っているし,この形だからやりがいや楽しさを感じられる度合いが強いのだと,改めて感じる機会になりました。

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