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Blogger's Avatar  2009-7-15 3:10
 お知らせの方にも書きましたが,NPO法人日本クリエイティヴ・セラピスト協会の理事に就任しました。初めての理事会というものにも出たところで,何となく実感がでてきたところです。最近は少し余裕があるんだけど,かなり忙しいのが続いていたので心身に疲労が蓄積されてる感じで,休養や楽しむ時間を大切にしてます。
 さて,事例検討会とかGSV(グループ・スーパーヴィジョン)なんかに僕はよく出るわけだけど,どうやら参加者側が発言するということが抑制される傾向があるということに最近改めて気づかされた。もちろん今までも,どこに行っても発言は控えめで,事実確認とか細部の質問などに終始して,自分なりの見立てや意見というのがとても少ないというのは感じていて,何十人と参加者がいても,そこまで突っ込んで発言するのは僕を含めた数人という感じだったりするので,違和感はずっとあった。そして,コメンテーターやヴァイザーの意見を聴いて学ぶという姿勢が強いんだということも感じていた。日本人的といえばそれまでなんだけど,後輩にあたる大学院生と話す機会があって,そんな話になったので違和感を感じてるのは僕だけではないなと思ったし,これは少し提言しておきたい。
 まず,Cl−Th関係でいえば,事例検討会やGSVで事例を出す人はClの立場で,その他の人はすべてThの立場になる。どうも,コメンテーターやヴァイザーだけがThの立場だと思われている風潮があるようだけど,何らかの相談に訪れる人がClなわけだから,事例を出す人のみがClの立場であり得る。そこが明らかになれば,Clの事例を通した悩みなどについてThが支持したり助言をしたりするのがCl−Th関係であることは間違いがなく,自ずとするべきことは明らかになる。Thの立場である参加者は,事例を出したClがよりよい対応ができるように,また事例を通して成長できるように,応答するべきだと思う。そうでなければ,Cl−Th関係がそこに成り立たなくなる。先に挙げた後輩は,「事例を出して何のコメントもない時にどんな気持ちになるか考えてほしい」と発言しない人たちに対しての想いを話してくれたが,まさにその通り。事例を出したClに対しても,その事例の中のClに対しても,失礼に当たるのではないか?
 そして,参加者自身の成長のためにも,発言はした方がいいと思う。僕はかなり緊張するタチで,10人程度の中で発言するにも両手がガタガタ震えるぐらいのあがり症だ。カウンセリング/心理療法で1対1とかならあまり感じないのだけれど,それでも初対面はそれなりに緊張している。とにかくそんな調子なので,目立つのも好きではないし,発言なんかしたくないというのも部分的には本音だ。でも僕は,臨床家として成長したいし,クライエントさんの役に立ちたい。だから無理をしても自分の意見をまとめて発言する努力をしている。ずいぶん昔に覚えたので出典は定かでないが,人間の能力というのはインプットとアウトプットが組み合わさって初めて身についていく。漢字を見て覚えるだけでは難しく書いていくことで身につくことや,理論が理論だけでは役に立たず実践と組み合わさって役に立つように,カウンセリング/心理療法における見立てや読み,対応能力などは,実践を含む事例を通して真に身につき高められる。だから,事例検討の時に考えているだけでなく,発言するべくまとめ上げる努力をして初めて事例に対応する能力が高まるはずだ。少なくとも,レジュメを見て聴いているだけよりは大きく違うことは,自分の実感を通して確信している。
 その意見が的確であるかどうかは,事例を出した本人,ひいてはその事例の中のクライエントさんでなければわからないことだ。でも,ひとつの見方を提示することで,そこを基点に思考というものは動き始めるし,その事例の中のCl−Th構造の中では気がついていない部分を,擬似的なCl−Th構造(この場合は事例の中のClについて発言者がその事例の擬似的なThとして考えるという意味)の中でなら気がつける可能性というのは高まる。そして,決してその場のコメンテーターやヴァイザーが唯一正しい意見を出せるというものではなく(もちろん経験値的に的確である可能性は高まるが),その事例検討会なりGSVなりの場全体がグループ・プロセスとして機能することが重要なのだと思う。どうも,大学院時代から意見を出さずにコメンテーターを務める教員の意見を待つ風潮があるらしいが,やはり教育段階で自分の意見を述べるという態度を身につけることは重要だと思うので,できるなら大学院生時代から,もちろん今からでも,よりよい場を作っていけるように努力しましょう。

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