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Blogger's Avatar  2010-4-19 18:02
 3月の怒濤の忙しさと新年度の慌ただしさが一段落した感じだけど,また新しいことを勉強し始めたりもしているので,忙しさはあまり変わらないかも。空くと何か入れたくなる強迫的な性分なんだけど,まあ忙しくて中断してた機器の改造なんかも,再開し始めたので,気持ちにゆとりが出てはきているかなと。今日はゆとりなどのカウンセラー/セラピストの姿勢に関する話です。
 カウンセラー/セラピストとしては,カウンセリング/心理療法を行う時には気持ちにある程度のゆとりがあった方がいい。緊張感はある程度必要だけど,余裕がない状態は視野を狭めるので,微妙な部分に気がつくアンテナの感度が悪くなる。フロイトの言う「平等に漂う注意」ができるようになるにはこの余裕とかゆとりが必要で,その漂う注意の中で浮かび上がってくる何かをつかみとることができると,面接が深まっていく。プロセス指向心理学(プロセスワーク)の創始者のパートナーであるエイミー・ミンデルは,これを魚釣りにたとえていたりする。魚釣りでは,茫漠として拡散した注意力で魚がかかるのを待ち,魚がかかると釣り竿と魚の反応に集中する。カウンセリング/心理療法でも,この拡散した注意力を発揮できるかどうかは,1回の心理面接の中でもその展開に大きな影響を与える。ミンデルの言うところは,「平等に漂う注意」よりもさらに微妙で繊細なもの・・「雰囲気」とでも形容したらいいかな・・をつかみとることを指しているので同義ではないけれど,セラピストの姿勢という点ではかなり類似していると思う。
 この拡散した注意力は,セラピストに余裕がある状態,言葉を換えるとリラックスした状態でないと発揮するのが難しい。集中というのはある意味で視野狭窄をもたらすものなので,集中していること以外の他の要素が見えづらくなる。脳波でいえば,アルファ波もベータ波も,どちらも「集中している」という言語表現に当てはまるけど,その質が異なっている。おそらくは,アルファ波のような半覚醒状態がカウンセリング/心理療法に適している状態だと思う。普段はアルファ波で聴いていて,必要に応じてベータ波が働くという形になると考えられる。実際にカウンセリング/心理療法を行っているセラピストの脳波を調べたという研究は寡聞にして知らないけど,前に茂木健一郎さんの講演で,河合隼雄先生の脳波を調べさせてほしいと話して機会を窺っていたら,亡くなられてしまったという話をしたことを思い出した。河合先生だとアルファ波ばっかりでベータ波なんか出なさそうだけどね。そのうち,脳科学の研究者とでも知り合いになれたらやってみようかな。まあ,バイオフィードバックの機械でも使えばある程度自分でできるだろうけど。
 でも,認知行動療法とかはちょっと方向性が違うから,結構ベータ波なのかも。集中という中でも,アルファ波は記憶とかの入力に適していて,ベータ波は思考とかの出力に適しているらしいので,構成のしっかりしている認知行動療法などはベータ波が出やすい気がする。無意識的な領域にアクセスしようとすると,やっぱりアルファ波の状態じゃないと難しいと思うし,クライエントさんもアルファ波に入っていけないと夢を扱うのとかは難しくなると思う。単純に分けると,自律神経の交感神経優位ではベータ波,副交感神経優位ではアルファ波が出やすくなっていると考えられるので,交感神経優位で不調になっていることが多いクライエントさんには,脳の中で鏡の役割を果たすミラーニューロンにアルファ波状態のセラピストが会うことが役に立つんじゃないかと思う。ちょっと乱暴な論を展開してるかもだけど,少なくともカウンセラー/セラピストがどういう状態でクライエントさんの前にいるのかは,その存在のあり方だけでカウンセリング/心理療法に大きな影響を与えるものだということは間違いないはずで,技法だけじゃなくそういう点も研究されていいと思うんだよね。

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