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カウンセラー養成等の傾聴の誤解

カテゴリ : 
臨床心理士(CP)ブログ » 心理臨床の現場から
執筆 : 
Blogger's Avatar  2019-7-28 20:02
 梅雨も明けてきて暑くなってきましたので,みなさんご自愛ください。もう月末ですが,ここのところ本当に月末ギリギリか過ぎてしまってからの更新でしたので,少しだけ余裕をもって書ける感じがしています。いずれにしても,お待たせしてしまってごめんなさいなのですが(苦笑)。今回は,ちょうど知人のFacebookで知った最近のカウンセラー養成の傾向などについて,驚いたことがあったので,傾聴などの基本的な技法論を含めて,少し書いてみたいと思います。
 何に驚いたかというと,カウンセリングで悩みなどを傾聴する過程で,ひとしきり悩みを話した後に,カウンセラーが「○○という相談内容でよろしいですか?」という形で要約するんだそうです。カウンセラー養成の講座などは,今でも多いのだろうと思いますが,割と共通性があるようなので,傾聴の技法的なところで,何か不思議な理解の仕方がまかり通ってしまっているように思えてしまいました。まあ,何というか,サービスとしての齟齬がないようにする意味では,共通理解として言語化しておくというのは,必要な側面もあるのかもしれないので,カウンセラーとして働く企業や組織の現場によってはそういうルールでやりましょうというのはあると思います。しかし,カウンセリング/心理療法における傾聴の基礎としては,やはりズレていると感じるので,何か原則的な部分が誤解されているのではないかと思います。本質をはずれた基礎技法の教え方をすると形だけになってしまうので,健常度の高い方はともかく,精神症状やパーソナリティ傾向が複雑になると適切な傾聴ではなくなってしまいます。

 推測になりますが,「反射」や「伝え返し」などの技法が転じて,相談内容の要約になってしまったのではないかと考えられます。「傾聴」の技法を身につけるという場合,ほとんどはロジャーズの理論や技法が基礎となっています。形式的にはオウム返しのような応答を練習するのですが,内容が込みいってくると基本的に相手の言葉を使ってまとめ返すことをします。それがいつの間にか,相談内容を要約するのがいいという方向に理解されていったように思います。しかし,オウム返しのようにみえる「反射」は「感情反射」と呼ばれ,クライエントが話した内容に含まれる感情の部分を返していくことで,こういう気持ちになっているということが鏡のように反射され,クライエントが悩みを受けとめてもらえている感覚になるとともに,自分の気持ちを実感して深めていくことが本質的な意味といえます。「伝え返し」も意図するところは同様です。それを,事実関係のところを要約するような応答をしてしまうと,気持ちのところがそぎ落とされやすく,そういう応答をすると気持ちを実感して深めていく過程が途切れてしまいやすいのです。

 混乱していて話にまとまりがないような場合は,カウンセラー側の理解のために事実関係を整理していくことはありますし,それでクライエントも自分の言いたいことがまとまっていくのでわかってもらえたという感覚につながる場合もあるので,一概に要約することがいけないというわけではないのですが,一律に要約するというクセがついていると,要約すること自体が目的になってしまいかねず,質問も事情聴取に近くなって共感的理解から離れていきます。あくまで,クライエントの悩みを感情レベルで理解していくための傾聴であり,感情反射の本質を理解しながら応答を身につけていくことで,クライエント自身が自分の感じている気持ちを深く理解していき,気づきにつながっていきます。傾聴だけでも奥が深く,神経症の軽いレベルの主訴であれば,傾聴していくだけでも心の自然治癒力が回復し,充分にカウンセリングとしての効果を発揮することができます。それを教えるには,実践を通して体感しているような経験値が必要です。形だけ覚えて頭で理解していても,手に馴染んでいないような技法は伝えることがかないません。正しい理解が広まることが,カウンセラーの質の向上にもつながると思いますので,本質を伝えられる講師が増えていくことを願ってやみません。

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